part 1: ヘルスケアで求められる人工知能とConcept Encoder開発の経緯

日常的に人工知能(AI)という言葉を耳にするようになった今、ヘルスケア・インダストリーでもAIの活用検討と実用化への各種取り組みが始まっています。FRONTEOヘルスケアは、ヘルスケア関連ビッグデータの利活用を促進するAIエンジンとして、自然言語解析に強みを持つ「Concept Encoder(コンセプトエンコーダー)」(特許出願中、論文投稿準備中)を開発しました。本ページ(part 1)ではEBM(後述)が求められるヘルスケア領域でConcept Encoderが生まれた経緯、part 2ではエンジンの特徴、さらに活用範囲まで、ヘルスケア・インダストリーにおけるAIのニーズをふまえて具体的にご説明します。 part 2: Concept EncoderのAI技術の強みと活用例を読む

ヘルスケア領域で高まるビッグデータ解析ニーズ

近年のコンピュータの性能向上とインターネットの急速な普及により、あらゆる電子データが刻々と蓄積し、ビッグデータ化が進んでいます。この宝の山から新たな価値を生む手段のひとつとして注目・検討されているのが「AIの活用」です。

「AIによって、がんの画像診断を医師の何倍ものスピードで正確に行うことに成功した」というニュース、これはAIで画像データを効率的に解析した例です。ヘルスケア領域には、画像データに限らずたくさんの種類のビッグデータが存在します。その中でも「テキストデータ」の効率的解析と有効活用に強みを持つ新しいAIエンジンとして誕生したのが、FRONTEOヘルスケアの「Concept Encoder」です。

ヘルスケア情報にはエビデンス(EBM)が必須

今は、知りたいと思ったことを、インターネットでいつでもどこでも手軽に検索できる時代です。突然頭痛に襲われたとき、インターネットで検索すれば、頭痛の種類や原因、解消方法など、さまざまな情報がリストアップされます。しかし、検索結果が多すぎて、本当に正しい情報にたどりつくのが難しいこともあります。医療・ヘルスケアの分野では、間違った情報に基づいて行った対応が、ときに健康に重大な不利益をもたらす可能性があるため、正しい情報を慎重に選択しなければなりません。これは、インターネットに限らず、マスメディア等から得られるすべての情報に対して当てはまります。

このような背景により、ヘルスケアの領域ではEBMが重要視されます。EBM(Evidence-based medicine)とは、日本語では「根拠(エビデンス、後述)に基づく医療」となります。これは、患者さんのために、研究結果やデータによる科学的根拠に加え、医療者の経験や患者さんの価値観を統合して、その時点での最良の根拠を思慮深く活用する医療を指します。

EBMは、決して新しい概念ではありません。病気の治療法をはじめとした医学は、EBMに基づいて進歩してきました。医学史を振り返ると、医療従事者が「客観的視点」を保ち、人体や病気についての知識を根拠に基づいて蓄積・体系化してきたことがわかります。

EBMを担保する統計学的解析

医学・医療の分野では、ある治療法がある病気に対して安全で効果的であるかどうか、「確率的な情報として示す検証結果」をエビデンスと呼びます。これは、EBMのうち、「科学的根拠」を支える部分です。つまり、医学的なエビデンスを得るためには、統計学的解析が必須となるわけです。

医療現場では、観察、検査、診断などにより、日々多くのデータが収集・蓄積されています。医療データのうち、脈拍・体温・血圧・酸素飽和度・血液・尿検査などの「数値データ」、および心電図・X線・MRIなどの「画像データ」は、個人のデータとして患者さんの診断に用いられると同時に、新たな治療法を確立するための臨床試験などのデータプールとして、エビデンスを得るための統計解析に利用され、役立てられてきました。

さらに、今日、ビッグデータ化した診療情報から新たな価値を生み出すべく、エビデンスに基づいたAI解析の試みが世界各国で始まっています。代表的な医療ビッグデータとして、診療情報のほかにゲノム情報が挙げられますが、こちらもエビデンスに基づいたAI解析の試みが行われています。

ヘルスケア領域を広く見渡すと、ライフログ(日々の生活習慣の記録)や介護関連情報なども、エビデンスに基づいたAIの活用により、付加価値のあるビッグデータとみなすことができます。

エビデンスに基づいてヘルスケアの向上を目指すConcept Encoder

厚生労働省は、2016年10月公表の「保健医療分野におけるICT活用推進懇談会」提言書の中で、ICTを活用した「次世代保健医療システム」の姿と、これを構築するためのアクション・工程表を提示しました。提言書では、最新のエビデンスや診療データ(ビッグデータ)を、AIで解析し、現場の最適な診療を支援する「次世代型ヘルスケアマネジメントシステム」(仮称)を2025年度までに本格運用の段階まで整備すると宣言されています。これは、現在診断や治療が難しい疾患に対し、AIによるビッグデータ解析を通じて、個人の症状や体質に応じて迅速・正確な検査・診断、治療が受けられるような医療を実現することを意味します。

医療ビッグデータのうち、数値データや画像データは、前述のとおり世界中でAIを活用した解析が進められています。一方で、電子カルテ等の自然文で記述されている部分は、膨大な量の貴重な情報源であるにも関わらず、これまで利用の範囲が限定されていました。というのは、自然文のテキストデータは、記述形式や記載内容などが施設や個人ごとに実に多様かつ具体的で、解析のために均質なデータとして取り扱うのが難しいからです。

FRONTEOヘルスケアが開発したAIエンジン「Concept Encoder」は、言語をベクトルとして扱うことにより、EBMに欠かせない「統計学的手法」を自然言語解析に導入できます。また、言語以外のデータとの共解析も可能です。つまり、Concept Encoderは、ヘルスケア向上に向け、これまでに蓄積された医療・ヘルスケア関連ビッグデータと、この先追加され続けるデータを、自然文で記述された部分も含めて、エビデンスに基づいて有効に解析・活用することができるAIなのです。

part 2: Concept EncoderのAI技術の強みと活用例を読む