[exam]知って防ぐ国民病:脳卒中

検査一覧・特集 / 執筆 : FRONTEOヘルスケア

(監修:杏林大学医学部 脳卒中医学教室 教授/同付属病院 脳卒中センター長 平野照之)

知って防ぐ国民病 脳卒中

突然、身体の自由がきかなくなり、 寝たきりの原因第1位の「脳卒中」。
恐ろしい病気ですが、知っていれば防げることもたくさんあります。

 

脳卒中とは

脳卒中の「卒中」とは、『卒然として邪風に中(あた)る』、つまり、“突然悪い風に中って倒れる”という意味です。この言葉が表す通り、脳卒中では突然激しい頭痛に襲われたり、意識がぼやけたり、手足のしびれや話がうまくできなくなったりする症状が現れます。

 

脳卒中は要介護となる原因の第1位

脳卒中は、日本人の死因としてはがん、心臓病、肺炎に次いで第4位ですが、介護が必要となる原因の第1位です。このため、患者さんご本人だけでなく、ご家族の方にとっても、脳卒中の予防はきわめて重要です。

肺炎とのかかわりも深い脳卒中

以前は日本人の死因の第3位だった脳卒中ですが、平成23年より肺炎が第3位、脳卒中が第4位となっています(平成24年度厚生労働省人口動態調査)。肺炎の増加はわが国で高齢者が急激に増加したことが背景にありますが、高齢者の肺炎の約7割は唾液や胃液とともに細菌が肺に流れて起こる誤嚥性肺炎に関係していると言われています。寝たきりになると、この誤嚥性肺炎を起こしやすくなりますので、脳卒中は肺炎にも密接に関わっていることを覚えておきましょう。
ひとたび起これば半身不随や寝たきりになる人が多い脳卒中は、たとえ命を取り留めても、その後の人生を変えてしまう可能性のある恐ろしい病気なのです。

脳卒中の種類・・・血管が詰まる脳梗塞と血管が破れる脳出血

脳卒中には、血管が詰まって起きる「脳梗塞」と、血管が破れて起きる「脳出血」の2つのタイプがあります。

長らく日本人の死因第1位であった脳卒中が、現在第4位まで低下した背景には、高血圧の治療や予防が進み、高血圧が減ったために、脳卒中のひとつである脳出血が減少してきたことも影響しています。
冷蔵庫の普及率が上昇するとともに食品の保存に「塩」を使用する量が減ったことも、高血圧の減少、そして脳出血の減少につながっているとも言われています。
これに対し、血管が詰まるタイプの脳梗塞は増加傾向にあり、脳卒中の患者数自体は団塊の世代がすべて後期高齢者となる2025年までは増加すると予測されています。

脳出血

血管が破れて起きる脳卒中には、脳内を網の目のようにはり巡る血管が破れて出血する脳出血と、脳表面の血管が破れ、脳と頭蓋骨の間にある3層の膜の2枚目の膜である「くも膜」の内側に出血する「くも膜下出血」があります。

脳出血の最大の要因は高血圧で、もろくなった血管や脳動脈にできたこぶ(動脈瘤)の破裂によるものですが、血管の奇形が原因で起きる場合もあります。

脳出血の原因となる脳動脈瘤や脳血管の奇形は、脳MRI検査や脳MRA検査で発症前に発見することが可能です。

 

脳梗塞

血管が詰まって起きる脳梗塞は、動脈硬化が原因となるもの(アテローム血栓性脳梗塞・ラクナ梗塞)と、不整脈が原因となるもの(心原性脳塞栓症)の2種類があります。

脳梗塞の要因① 動脈硬化

動脈硬化では、悪玉コレステロールであるLDLコレステロールが動脈の内側を覆っている内膜に入り込み、内膜が分厚くなり血管が狭く細くなってしまい、そこに血の塊(血栓)ができて血管を塞いだり、血栓がはがれて炎症が起きたりします。
動脈硬化は高血圧、喫煙、脂質異常症、糖尿病などの危険因子により発症・進行しますので、喫煙はきっぱりとやめ、高血圧・高脂血症・糖尿病があれば、適切な治療を受けましょう。

動脈硬化が実際どの程度進んでいるのかについては、頸動脈超音波検査で調べることができます。

脳梗塞の要因② 不整脈(心房細動)

不整脈は、脈が飛んだり、心臓がどきどきするなどの症状で知られています。

不整脈の中でも心房細動という病気があると、心臓の血流が悪くなって血液が心臓によどむようになります。こうしてできた血の塊が、あるとき心臓から流れ出て脳まで流され、脳血管が詰まって心原性脳塞栓症と呼ばれる脳梗塞が起きます。心臓にできる血の塊は比較的大きいサイズになりやすく、脳の太い血管が詰まってしまうと、脳の広い領域で血液が途絶えることになり、血流が回復しなければ、重い後遺症が残ることになります。

不整脈は心電図検査で、心臓の中に血栓ができているかどうかは心臓の超音波検査や胸部CT検査で調べることができます。まずは、脈が不規則になっていないかどうか、ご自身の脈を調べてみましょう。

 

 

 TIA: 脳梗塞の前兆が一瞬現れて消える危険信号

一過性脳虚血発作(TIA)はただちに専門治療が必要とされる危険な発作ですが、症状が消えてしまうため知らないと気にもとめられず、脳梗塞を防ぐ最後のチャンスを逃してしまう可能性があります。

TIAが認められると、それ以降3カ月以内に脳梗塞を起こす人は6人に1人で、このうち半数は、TIAから48時間以内に起きると言われています。英国で行われた研究では、TIAがみられて1日以内に受診した場合、脳梗塞の発症を79.6%おさえられたことが報告されています(Rothwell PH, et al. Lancet 2007; 370: 1432-1442)。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17928046

TIAの症状をぜひ覚えておき、少しでも疑わしいと思ったら、決して先延ばしせず神経内科・脳神経外科などがある病院を即受診して、専門医の診察を受けましょう。

FASTは脳梗塞の前兆として現れる特徴的な症状に絞ってわかりやすくまとめられていますが、脳梗塞の前兆が一瞬現れて消ええてしまうTIAについては、もう少し細かい症状を覚えておきましょう。特に、目の症状は見過ごされやすいので注意してください。

脳卒中の予防のために今できることーまずは血圧測定を!

脳卒中を予防する手始めに、自分の血圧を測ってみることをお薦めします。血圧計は、上腕に巻くタイプのものがよいでしょう。家で血圧を測って収縮期血圧135mmHg/拡張期血圧85mmHg以上であれば、かかりつけの医師に相談し、指導を受けましょう。

脳卒中の治療は、発症後4.5時間以内が勝負です。一秒でも早く開始すればするほど回復のチャンスは大きくなります。FASTはあなたや身の回りの方の命を救うキーワードです。脳卒中の兆候が見られたら迷わず救急車を呼び、専門病院を受診しましょう。

 

 

 

<プロフィール> 平野照之(ひらの・てるゆき)

1988年熊本大学卒業、同第一内科入局。
91年国立循環器病センターレジデントを経て、96年メルボルン大学National Stroke Research Institute留学、98年熊本労災病院勤務。1999年熊本大学神経内科医員、2002年 同助手、06年同講師、12年 大分大学准教授、2014年より現職。
24時間365日無休の脳卒中センターを統括し、国内第2番目となる脳卒中に特化した講座を主宰し現在に至る。


出典:YOUR DOCK編集部(検査一覧に戻る