[archive]血圧の変動幅が大きいと、脳機能の低下が早まる可能性が高い

薬学博士編集 / 執筆 : FRONTEOヘルスケア

高血圧は、脳卒中や心筋梗塞などの原因となるだけでなく、認知機能の低下や認知症のリスクを高めることが知られています。つまり、血圧が高い人はボケやすいということですが、どうもそればかりではないようです。

最近米国の研究チームが、血圧が測定のたびに変動する高齢者は、変動の少ない高齢者に比べて、認知機能の低下が早まることを、米国心臓協会の学術誌である『高血圧』誌に報告しました。血圧は、測定のたびに微妙に値が変わるのが普通ですが、大きく変動する場合があり、それが認知機能の低下と関連がみられるというのです。

血圧が測定のたびに大きく変動することの裏側には、脳の構造や機能的な障害、微小血管の損傷や動脈硬化などが存在する可能性と、逆に不安定な血流がそれを促進する可能性の両方があることを意味しています」とこの研究の筆頭研究者であるボニー・クイン博士は語っています。「このような血圧変動は、血管自体の炎症や機能障害などの病理的なプロセスの結果かもしれないということです。」

 

平均血圧の高低よりも不安定な血圧の制御がポイントにも

研究チームは、中国の国民健康・栄養調査の対象者976人(半数が女性)の血圧を5年以上にわたって追跡調査しました。対象者は、この間に数年おきに3-4回の血圧測定を行い、また「単語思い出し」や「数字の逆唱(言われた数字を逆の順番で答える)」といった一連の認知機能検査を受けました。

これらのデータを解析した結果、数年おきに測定した血圧の変動幅が大きかった人は、認知機能および言語記憶の低下速度が早いことがわかりました。この研究では、一般に問題にされる血圧の高さは、認知機能の低下と関連はなかったということです。

「一般的に、医師は平均血圧の高い低いを重視する傾向がありますが、血圧変動幅が大きい場合のほうが、患者は医師による管理を必要とするかもしれません」とクイン博士は語っています。「ひょっとしたら、不安定な血圧を制御することこそが、高齢者の認知機能を維持するための戦略になるかもしれないのです。」

 

日本の研究グループからも報告

本研究は、観察的な研究なので、血圧変動と脳機能低下のどちらが原因でどちらが結果なのかを明らかにするものではありません。とはいえ、不安定な血圧(大きい変動幅)が認知機能の低下に関連しているという報告は、ここ数年増加の傾向にあります。たとえば、2014年には同じ『高血圧』誌に日本の研究グループが、家庭用の血圧計で毎日測定した結果、日ごとの血圧の変動幅が大きくなると認知機能の低下も速くなったことを報告しています。この研究では血圧が高いことも認知機能の低下に関連しましたが、変動幅の影響のほうがより大きかったということです。

 

最後に

他にもいくつかの大規模な疫学研究において、同様の報告がなされており、血圧の変動が重要な疾患リスクであることは間違いなさそうですが、クイン博士らは、これらの知見を確認するために、臨床的介入試験および長期研究が必要だろう、と結論づけています。


出典:『高血圧

出典:KENKO JIMAN編集部(薬学博士編集:山野秋生)