[archive]腹部の脂肪が心臓に与える影響:CTスキャンで質を評価

薬学博士編集 / 執筆 : FRONTEOヘルスケア

腹部脂肪のうち体幹部についた内臓脂肪組織の“量”の増加と“質”の低下が、共に心臓病リスクを高めるようです。皮下脂肪は脂肪細胞の貯蔵倉庫として保護的に働くのだとか。脂肪の“質”についてはまだほとんど報告がないので今後の展開が期待されます。

腹部の脂肪、特に体幹部の“隠れた”脂肪(内臓脂肪組織)の“量”の増加と“質”の低下が、心臓病のリスクを高めるようだ、という研究結果を米国・国立心臓肺臓血液研究所の研究チームが『米国心臓学会雑誌』に報告しています。

お腹についた脂肪は、指でつまめる皮下脂肪と、外からは見えない内臓脂肪に分けられます。内臓脂肪は、文字通り内臓の周り(腹腔内)に蓄積した脂肪のことです。これまでの研究で、過剰に内臓脂肪をため込んでいる人は、皮下脂肪の多い人に比べて、心臓病リスクの高いことが報告されていました。

今回の研究で、脂肪のつく“部位”と“量”以上に、その“質”が重要であることが明らかになったということです。この研究では、脂肪組織の“質”は、CT検査で測られる脂肪組織のCT値のことと定義されています。これは一般的とはいえませんが、研究チームによれば、脂肪組織のCT値(画像濃度値)が低下する原因には、脂肪含量の上昇、脂肪分解活性の低下、血管の減少、細胞の低酸素状態、脂肪含有細胞のサイズの拡大など、脂肪組織の“質”の低下につながるものが多いということです。

「実際興味深いことに、内臓脂肪の“量”の増加と、“質”の低下が、どちらも心臓病リスクの悪化に関連していたのです。それは体重増加の影響を差し引いてもみられました」と主任研究者のキャロライン・フォックス博士は語っています。「これは本研究以前には示されていなかったことです。」

特に“質”が重要だと博士は言います。「脂肪の“質”は、新しい指標なのでそれを理解するためにもっともっと研究が必要です。私たちはCT値を脂肪の質の間接的な指標として使い、数字が下がることが心臓病リスクの上昇に関連していることを発見しました。」

 

CTで測った内臓脂肪の“質”が重要

研究チームは、腹部脂肪組織の“量”と“質”が、心臓病リスクに与える影響を明らかにしようとしました。フラミンガム心臓研究という数十年にわたって継続中の疫学調査で、冠状動脈および腹部大動脈石灰化を測定する調査の一環として、CT画像診断を受けた参加者1,106人について、腹部脂肪組織の“量”と“質”を評価するためにCTスキャンを見直したのです。

参加者の平均年齢は45歳で、44%は女性でした。CT画像は、からだの中の脂肪の“位置”と“量”、そして“質”を測定することができます。画像解析の結果、6年間の追跡調査期間において、参加者は、平均で、皮下脂肪量が22%増加し、腹腔内脂肪量が45%増加したことがわかりました。

心臓病リスクとの関連を解析したところ、全体的に、脂肪組織の“量”の増加、そして“質”の低下は、どちらも心臓病のリスクを高めることがわかりました。特に内臓脂肪が良くなかったといいます。内臓脂肪の増加が大きかった人は、血糖値の上昇、中性脂肪値の上昇、そしてHDL(善玉)コレステロールの低下など、代謝系リスク因子が大きく増加したのです。

 

皮下脂肪は貯蔵倉庫として保護的に働く

皮下脂肪は、余分な脂肪粒子を貯蔵する倉庫の役割をはたしているので、たくさんあることは実際には保護的に働くと思われます。一方、内臓脂肪は、より危険であると考えられます」とフォックス博士は語っています。

全体的に、肥満度(BMI)または腹囲の変化を考慮しても、内臓脂肪と心臓病リスクの間には統計的に有意な関係が見られました。研究者らは、腹部脂肪組織の“量”と“質”の変化に応じて、参加者を3つのグループに分けた結果、脂肪組織の“量”の増加がより大きく、脂肪組織の“質”がより低下したグループで心疾患のリスク因子の発生率が相対的に高まることを見出しました。

 

最後に

今後の研究に関して、フォックス博士は脂肪組織の“質”の意味を理解し、何故そして如何にそれらが肥満の代謝的な帰結(高血圧、高コレステロール、糖尿病、炎症、インスリン抵抗性など)と関係するのか明らかにするために、もっと多くの検討が必要であると語っています。同様に、なぜ脂肪組織の“量”の増加に伴って起こる“質”の低下が、有害な心臓代謝系の変化を引き起こすのかを知ることが重要だとしています。

なお、本研究は、観察的な研究であるため、いかなる因果関係についても結論を出すことはできませんが、これまでも多くの研究で、内臓脂肪ががん、心臓病などのリスクを高めることが報告されている、と博士らはコメントしています。


出典:『米国心臓学会雑誌

出典:KENKO JIMAN編集部(薬学博士編集:山野秋生)