[archive]代謝とプリン体:肝臓の役割を知って痛風を予防する

サイエンスライター / 執筆 : FRONTEOヘルスケア

「メタボリックシンドローム」の「メタボリック」は、本来「代謝」のこと。代謝は体にとって重要なメカニズムではありますが、時にマイナスにも働きます。これからの忘年会・新年会シーズンに向けて、知っておいた方がいい「代謝」のお話を。

 


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「代謝」という言葉は、なんとなく意味はわかっていても、説明はしにくい単語のひとつです。ウィキペディアによれば「生命の維持のために有機体が行う、外界から取り入れた無機物や有機化合物を素材として行う一連の合成や化学反応」だそうです。要は体内に取り入れた食べ物や水、空気などを化学反応させ、エネルギーや必要な物質を作り出す過程ということになります。

 

「代謝」という字面もちょっと不思議で、字だけ見ると「当社の山本が大変ご迷惑をおかけいたしました」と代わりに謝っている状況かのようですが、もちろんそんな意味はありません。実は「謝」という字には「衰える」という意味もあり、「代謝」は「古くなって衰えたものに代わり、新しいものが作られる」という意味合いになるのです。「皮膚の新陳代謝」といった使い方が、その代表的な例でしょう。

 

代謝といえば、肝臓の出番

代謝という言葉には、必要なものが作られるだけでなく、不必要なものが分解される過程も含まれます。特に肝臓は、体外から入ってきた異物を代謝分解し、排出するという重要な役目を負った臓器です。

 

では具体的に、肝臓では何が行われるのでしょうか。肝臓で行われる反応のうち重要なものとして、異物の分子に対して酸素を取り付ける反応があります。すると、異物分子は水に溶けやすくなるので、尿に混じって体外へ排泄されてゆきます。要するに、一種の解毒機構です。

 

健康法の本などで、たまに「人工の化学物質は体内で代謝分解されず、蓄積してしまう」などと書かれたものを見かけますが、これはまったくの誤りです。肝臓は、人工だろうが天然だろうが、情け容赦なく代謝分解して体外に放り出してしまいます。広告や本に上記のような記述があったら、まず信頼に値しないとみなしてよいでしょう。

 

実際、医薬の多くは人工的に合成されたものですが、数時間で代謝されて体外へ出ていきます。たいていの場合、医薬を1日2~3回服用する必要があるのはこのためです。いつまでも医薬が体内に居座っていると、体に悪影響が出ることもありますので、代謝システムがなければ安心して薬を飲むこともできません。

 

酸化が裏目に出る場合

というわけで、肝臓の代謝機構はよくできた仕組みなのですが、やはり万能ではありません。酸素を取りつけることで、かえって始末が悪くなる化合物もあります。典型的な例が、ベンゾピレンという物質です。これは焼け焦げなどに含まれる化合物で、そのままなら大きな害はありません。しかし肝臓で酸素を取りつけられると、DNAに結合しやすい構造に変化してしまいます。これがDNAの正常な増殖を妨害し、最終的にはガンを引き起こすのです。

 

尿酸の構造式
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また、プリン体と呼ばれる物質群も、代謝によって厄介な存在になることが知られています。前述のように、化合物に酸素を取りつけると普通は水に溶けやすくなるのですが、プリン体はその例外です。プリン体が代謝されてできる尿酸は、極めて水に溶けにくく、足の指などの関節に結晶となってこびりつきます。この蓄積した尿酸が炎症を引き起こすのがいわゆる痛風であり、非常な痛みを伴うことで知られます。

 

プリン体とうまくつきあって痛風を予防する

痛風は40歳以上の男性に多く見られる病気で、かつては日本人には少なかったのですが、食生活の変化などの要因によって徐々に増えつつあります。予防のためには、プリン体を多く含む食べ物を控えるべきとよくいわれます。しかしプリン体とはうまみ成分でもあり、煮干しやレバー、エビといった美味しい食品に多いのが困ったところです。

 

ただし、食品から取り入れるプリン体は、体内にあるプリン体の2割ほどに過ぎません。プリン体はDNAの構成要素などとしてもともと体内にたくさんある物質であり、これらの代謝によって作り出される尿酸の方がずっと多いのです。このあたりは、以前取り上げたコレステロールと同じ事情です。

 

というわけで、痛風予防には食事制限も必要ですが、しっかり健診を受けて尿酸値を把握しておくこと、適度な運動をすること、ストレスを減らすことなども重要ということになります。まあこうしたことほど、言うのは簡単でも実行は難しいことであったりもするのですが。健康を守るための魔法のような方法はなく、日々の積み重ねこそが重要という、実に当たり前の結論になりそうです。


出典:KENKO JIMAN編集部(サイエンスライター:佐藤健太郎)