[archive]風邪のウソとホント(前編):書籍「かぜの科学~もっとも身近な病の生態」より

サイエンスライター / 執筆 : FRONTEOヘルスケア

寒い日が続き、風邪を引いてしまったという方も多いと思います。風邪は誰もが当たり前に引くものであり、真剣にその対策を考えることはあまりありません。実は研究者たちにとってもこれは同じで、めったに命にかかわることのない風邪の研究は、他の病気に比べるとあまり重視されてきませんでした。

 

しかし我々は生涯に200回も風邪を引き、トータルすると人生のうち約3年分は発熱や鼻水、咳などに悩まされる日々を送ります。人々が会社や学校を休む理由のほぼ半分は風邪であることを思えば、その社会的・経済的影響は実に莫大です。とすれば、風邪についてきちんと知っておくことは、決して無駄ではないでしょう。

 


Aleksandra Suzi/Shutterstock.com

かぜの科学~もっとも身近な病の生態」(ジェニファー・アッカーマン著、早川書房、のちにハヤカワ・ノンフィクション文庫)は、信頼できる科学文献をもとに、現在の風邪研究の最先端を一般向けにまとめた面白い本です。風邪についての意外な事実がこれでもかと並べられていますので、ここでその一部を紹介してみましょう。

 

(1)風邪は単一の病気ではない

コレラはコレラ菌に、水虫は白癬菌に感染することでかかる病気です。しかし、風邪菌や風邪ウイルスという名の病原体は存在しません。細かく分ければ、風邪の原因ウイルスは200種類にも及び、これらが引き起こす一見似たような症状を示す疾患群を、まとめて「風邪」と呼んでいるのです。

 

風邪の原因となるウイルスは、ライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルスなどの種類があり、インフルエンザウイルス感染によって発生するインフルエンザも、風邪に含めることもあります。風邪の原因ウイルスは全て正体が判明しているわけではなく、いまだ同定されていないものも多数あると見られます。

 

多くの感染症では、いったんかかると免疫ができてその後は再感染しにくくなります。しかし、風邪は一度かかっても何度でも感染してしまいます。風邪の病原体は多様ですから、あるウイルスに対して免疫ができても、他のウイルスには防御ができないのです。

 

(2)寒さと風邪は関係ない

英語で風邪のことを「cold」というほどで、寒い日に体を冷やすと風邪にかかると一般には思われています。しかし、多くの実験が行なわれたものの、寒いと風邪にかかりやすくなるという結果はほとんど得られていません。冬に風邪が流行るのは、空気が乾燥していることと、みなが室内で過ごすので感染が広がりやすいことが大きな要因のようです。

 

(3)年齢を重ねると風邪を引きにくくなる

イメージと異なりますが、若い人より年を取った人の方が、風邪を引きにくいという結果が出ています。10代の人に比べ、50歳以上の人が風邪を引く確率はおよそ半分だということです。それまで生きてきた中で、多くのウイルスに感染して抗体を獲得しているためです。確かに筆者も、学生時代はちょくちょく風邪で学校を休んでいましたが、最近は寝込むような風邪はほとんど引かなくなりました。ただし高齢者は、いったん風邪を引くと重症化するケースも多くなりますから、油断しない方がいいのも確かです。

 

(4)飲酒は風邪防止に役立つ?

これも研究者にとって意外な結果でしたが、ワインを毎日1~2杯飲む人は、全く飲まない人より風邪の罹患率が低いのだそうです。この原因はまだわかっておらず、アルコールにいくらかの炎症抑制や抗ウイルス作用がある可能性もあります。

 

Fh Photo/Shutterstock.com

 

ただし、別の原因で酒を飲む人が有利である可能性も考えられます。たとえば飲酒によるストレス解消や、飲酒できる程度の生活の余裕が、風邪を防ぐために有効なのかもしれません。ただし、ワイン1~2杯以上の飲酒はデメリットの方が大きくなりますから、風邪予防のために酒を飲もうなどとは考えない方がよさそうです。

 

(5)ビタミンCは効果がない

ノーベル賞を2度受賞したライナス・ポーリング博士は、1970年に風邪の予防にビタミンCの大量摂取が有効と発表し、これがかなり広く信じられてきました。しかし、その後多くの臨床試験により、ビタミンCに風邪の予防効果はないという結論が出ています。

 

風邪を引いてしまってからビタミンCを摂取した場合はどうかというと、わずかに症状の出る期間を短縮するというデータも出ている、という程度のようです。まあプラセボ効果も時には大事ですので、筆者が風邪を引いた時にはホットレモンを飲んで体を暖め、これでよくなると信じて眠ることにしています。

 

では風邪を防ぐにはどうすればいいのか、その話はまた次回に。


出典:KENKO JIMAN編集部(サイエンスライター:佐藤健太郎)