[archive]ヒアルロン酸について知っておくべきこと

サイエンスライター / 執筆 : FRONTEOヘルスケア

人間、自分のよく知らない言葉が出てくると、何とはなしに凄いもののように見えてきて、つい必要以上にありがたがってしまうものです。サプリメントなどの広告でカタカナの化合物名がよく出てくるのも、こうした効果を期待しているからなのでしょう。

 

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「ヒアルロン酸」というのもそのひとつで、その機能や構造をきちんと説明できる人は専門家に限られると思いますが、何とはなしに効果があるようなイメージが一般にも浸透しています。しかし実際のところは、どのようなものなのでしょうか。

 

ヒアルロン酸の働く場所

ヒアルロン酸は特別な物質ではなく、我々の体内にも存在しています。体重70kgの人であれば約15gのヒアルロン酸を持っており、うち約3分の1が毎日の代謝によって入れ替わっているといわれます。

 

ヒアルロン酸が体内のどこにあるかというと、細胞の隙間、関節の間の潤滑液、そして眼の「硝子体」と呼ばれるゼリー状の部分などです。言ってしまえば、人体に存在する隙間を埋める成分ということですが、これはこれで重要な役目を持ちます。

 

中でも関節の間にある、軟骨の成分としてヒアルロン酸は不可欠です。関節はさまざまな力がかかるポイントであるため、骨同士がぶつかり合って削れてしまいやすいのです。このクッションとなり、衝撃を和らげるのが軟骨であり、ヒアルロン酸の役目というわけです。このおかげで、人間の関節の摩擦係数は0.01以下という驚くべき数値を示します。これは氷の上を滑る氷以下の数値で、我々の関節がスムーズに動く大きな理由です。

 

ヒアルロン酸は紙おむつと似ている?

ヒアルロン酸は、多糖類と呼ばれる物質群に属します。ブドウ糖や果糖などの基本的な糖がずらりと長くつながったものを指し、デンプンなどもそのひとつです。ヒアルロン酸がデンプンと大きく異なるのは、マイナスに帯電しやすい「カルボン酸」と呼ばれる原子団をたくさん持っている点です。

 

ヒアルロン酸の構造式
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この、長い鎖にカルボン酸をたくさん持っているという構造は、紙おむつに使われる高吸水性ポリマー(高分子吸収体)とよく似ています。マイナス電荷をたくさん帯びた鎖は、その反発力によって大きく広がります。またその間に水の分子を大量に抱え込むことができるので、紙おむつはよく水を吸い込んでくれるわけです。

 

ヒアルロン酸もこうした構造であるため非常に保水力が高く、なんと1gで6リットルもの水を保持することが可能です。眼球の硝子体は99%が水分ですが、圧力に耐えるしっかりした構造で、これもヒアルロン酸の保水力あればこそ、です。糖というありふれた素材をもとに、ヒアルロン酸という見事な機能を持った材料が作られているわけで、自然のたくみに感心させられます。

 

ヒアルロン酸の使い道

ヒアルロン酸はこのように優れた成分ですから、多くの使い道が考えられています。化粧水をはじめとした、各種の化粧品に配合されているのはよく知られているでしょう。これも、ヒアルロン酸の水分保持力に注目し、肌に潤いを保たせるために用いられています。

 

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ただし、その効果はあくまで化粧水を塗っている間にとどまります。皮膚の第一の役割は、体内に異物を入れないためのバリアであり、ヒアルロン酸のような巨大分子を通すようにはできていません。つまり、ヒアルロン酸は皮膚の深層には浸透せずに表面に留まり、洗顔や入浴時に洗い流されてしまいます。

 

注射によって皮膚の下に直接注入するならば、ある程度長期的な効果が望めます。目尻などへのシワ取り注射がそれで、アレルギーなどの危険もない優れた材料です。ただしヒアルロン酸は少しずつ分解吸収されていきますので、せいぜい半年程度で効果は失われてしまいます。

 

年を取ってくると、膝などの関節の軟骨がすり減って痛みを生じます。この痛みの治療にもヒアルロン酸は用いられていますが、効果はあまりないとする試験結果もあるようです。少なくとも、サプリメントなどとして口から飲むのでは、効果がないと見てよさそうです(これは、コンドロイチンやグルコサミンなども同様です)。頭髪が薄くなった人が髪の毛を食べても髪が生えてくるわけではないのと同様、減ってしまったヒアルロン酸を口から摂取しても患部には届いてくれません。他の健康食品などもそうですが、耳に心地よい広告を簡単に鵜呑みにしない方がよさそうです。


出典:KENKO JIMAN編集部(サイエンスライター:佐藤健太郎)