[archive]血中脂肪濃度の軽度の上昇が膵炎リスクと関連している

薬学博士編集 / 執筆 : FRONTEOヘルスケア

血中の中性脂肪濃度が正常値よりわずかに高いことと、急性膵炎の発症リスクに関連がみられることが新たな研究で示唆されました。血中脂肪は、心血管疾患だけでなく多くの病気に関連しているようです。

デンマーク・コペンハーゲン大学の研究チームは、血液中の中性脂肪濃度が軽度から中程度に上昇することが、急性膵炎の発症リスクを高めることと関連しているようだ、という研究結果を発表しました。いままで考えられていたよりもはるかに重要な関連があるようだということです。

 

血中脂肪が膵炎の発症リスクを高める

膵炎は、強い痛みを伴い、死亡に至ることもあります。これまでこの病気につながる症状として、胆石、多量飲酒、極度の中性脂肪濃度が報告されていました。けれども、今回の研究では、中性脂肪濃度の軽度の上昇でも膵炎のリスクにつながる可能性のあることが明らかにされています。これは、11万人以上のデンマーク人を対象に実施されたもので、『JAMA内科学』誌に発表されました。

「私たちはこの結果に驚いています。軽度から中程度の上昇であっても血中脂肪が急性膵炎の発症リスクを高める、というのですから。実際、膵炎の発症リスクは、心血管疾患の発症リスクなどに比べてもはるかに高かったのです」と研究チームのシモン・ボー・ペデルセンは語っています。

 

これまで信じられていたよりはるかに深刻な事態

研究チームは、コペンハーゲン市民を対象とした複数の疫学研究の参加者116,550名のデータを解析しました。非空腹時の中性脂肪濃度が測定され、その後平均6.7年間にわたって急性膵炎の発症が追跡調査されました。

中性脂肪濃度の正常範囲は、1リットルあたり0ミリモルから2ミリモル(177mg/dL)の間であり、2ミリモルから10ミリモル(885mg/dL)になると軽度から中程度の上昇に分類されます。そして10ミリモル以上になると極めて高値であるとみなされ、これまではそうなって初めて膵炎のリスクが高まると考えられてきました。けれども、今回の研究では、1ミリモル未満の場合に比べて、2-3ミリモルでもリスクは2.3倍に有意に上昇することがわかりました。さらに、5-10ミリモルに上昇すると膵炎リスクは9倍近くまで上昇したのです。

「これは、これまで信じられていたよりはるかに深刻な事態です。今後は膵炎のリスク因子に血中脂肪濃度の軽度から中程度の上昇を追加する必要があるでしょう。例えばの話、患者が突然、上腹部の激痛を訴えたときは、急性膵炎を疑い、血中脂肪濃度を測定するべきだということです」と研究チームのボルグ・ノルデストガルド教授は語っています。

 

さらなる研究が必要

膵炎はありふれた病気です。日本では年間約6万人の患者がおり、増加傾向にあります。男性に多く、男女比は2:1です。典型的な膵炎は、膵臓が出す消化酵素が膵臓や周囲の組織に損傷を与えることで起こります。

「現在までの研究では、高コレステロール血症に焦点が当てられてきましたが、私たちの研究は、それ以外の普通の脂肪にも注意を払う必要があることを示しています。軽度から中程度の血中脂肪は、従来考えられていたよりも広範囲の病気の原因となるようです。現在多くの研究で血中脂質濃度を下げることが心血管疾患のリスクを下げるかどうかが調べられていますが、その結果を早く知りたいものです。なぜなら私たちにはもっと多くの情報が必要だからです」と教授は語っています。


出典:『JAMA内科学

出典:KENKO JIMAN編集部(薬学博士編集:山野秋生)