[archive]肥満研究では雌の動物実験も必要:ダイエットの効果やリバウンドに男女差あり

薬学博士編集 / 執筆 : FRONTEOヘルスケア

高カロリーの食事に対する反応は、男性と女性では異なっており、主として男性にあたる雄だけを対象に実施されてきたこれまでの研究成果だけでは、女性の肥満対策には充分ではないようです。今後は女性を対象にした研究の進展が待たれます。

ファストフードなどにしばしばみられる脂肪や砂糖を多量に含んだ高カロリーの食品は、人々を太らせて健康問題を引き起こす原因のひとつです。肥満を予防するために、これまで多くの研究者が、高カロリー食が肥満を引き起こすメカニズムについて精力的に研究を行ってきました。

ところが、米国テキサスA&M大学の研究チームによれば、このような研究のモデル動物として使われる雄のラット(ダイコクネズミ)には、大きな限界が存在するようです。雄だけを用いて得られた実験結果からでは雌の肥満の治療は不可能であるかもしれないというのです。

「過去の動物実験においては、雄の動物に対する過剰な信頼がありました。雌に特有の生理条件を考慮して実験を行ったところ、私たちが食事による肥満の基本モデルと考えているものは、雌ではかなり多くの面で違いがみられたのです」と筆頭研究者のエリン・ガイルズ助教授は語っています。

昔は、いろいろな系統のラットが肥満研究に用いられていました。痩せで知られる系統や肥満しやすい系統などがありました。ところが、それらは遺伝的な系統が異なるために、それがネガティブな影響を実験結果にもたらす可能性があったため、25年以上も前から、単一の系統のラットから必要な形質をもったラットを選択して使うようになりました。このようにして得られた豊富な表現型のラットを用いて、肥満の発症、減量、リバウンドといった生理的な変化についての多くの情報が蓄積されてきました。

けれども、これら研究の多くはまた「極端な男社会でもあった」とガイルズ助教授は言います。つまりほとんどが雄のラットを用いて実験が行われていたのです。

 

雄でいえることが雌ではまるで異なる場合がある

研究チームは、300匹以上の動物からのデータを集め、動物が肥満しやすい体質になる幼少期のポイントを明らかにしようとしました。そして、雄のラットの場合、幼少期に高脂肪食で太ったラットが成長後にも肥満しやすかったのに対して、雌の場合には、まったく逆であったことを発見しました。

「私は、多くの知見が雌の長期的な肥満傾向を予測できないことに本当に驚きました。特に雄では極めて信頼性の高い強力な予測因子が雌ではそうでなかったのです。雌の場合は少し成長してからの体脂肪量がとても良い指標になることがわかりました」とガイルズ助教授は語っています。

 

減量を長く維持した人ほどリバウンドが加速される

研究チームはまた、彼らの動物モデルが、減量後に再び体重増加する、いわゆるリバウンド現象に対する洞察に役立つことを示しました。リバウンドのスピードは、体重を維持できた期間に依存して高まることを発見したのです。つまり、より長い期間減量を維持するほど、いったんリバウンドが始まってからの体重増加が速く、さらに重くなる傾向がみられました。ただしこれは雄での観察結果であり、研究チームでは現在雌の場合を検証中です。また同時に閉経の影響もみています。

「こうした知見は、減量者がリバウンドを防ぐためには、生物学的原理に先回りした予防戦略を立てる必要のあることを示唆しています。研究者らは、この知見を、減量した元肥満者のリバウンドを防止するための生活習慣介入の開発に役立てることができるでしょう」と研究チームは語っています。

 

男女差を明らかにするための研究が必要

「もっと多くの研究が雌ラットに対して実施される必要があります。私たちや他の研究グループが、雄と雌の生理学的な違いについて理解しようと研究を行っていますが、ずっと雄を中心に実施されてきたことの遅れを取り戻すにはまだしばらくかかりそうです。最近は、研究費を配分する財団もこの限界を認識しており、すべて局面における性差に焦点を当てた研究を奨励しています。けれども、そのための道のりは依然として遠くて長いものだと言わざるをえません」とガイルズ助教授はコメントしています。


出典:『栄養学の最前線

出典:KENKO JIMAN編集部(薬学博士編集:山野秋生)