[archive]ケイ素サプリに注意:根拠に乏しい情報からは距離を置いて考えよう

サイエンスライター / 執筆 : FRONTEOヘルスケア

水素の次はケイ素?

近年、話題を集めた健康関連商品のキーワードといえば「水素」でしょう。体の重要分子を酸化破壊し、老化の引き金となる「活性酸素」をつぶしてくれるという触れ込みで、有名人を起用した大々的な宣伝がなされました。

 

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水素を多量に含むと称した「水素水」は、ドラッグストアやホームセンターの最も目立つ棚を占拠していましたし、水素風呂、水素化粧品、水素点滴といった関連商品も登場しました。はては水素バーや水素サロン、水素ヨガといった店舗までもが登場し、流行はとどまるところを知らないかにさえ見えました。

 

しかしその後、水素ブームは急速にしぼんだ感があります。水素の効能を疑問視する識者の声が相次いだこと、そして国民生活センターから一部の水素水に対して「健康増進法などに抵触のおそれがある」との指摘が出されたことなどが原因と思われます。医薬や化学の研究に長年携わった筆者の目からも、市販されている水素関連商品の科学的根拠は薄いと映ります。

 

しかし、こうしたブームは手を変え品を変えやってきます。水素の次に売り出されようとしているのは、どうやらケイ素のようです。実際、検索エンジンに「ケイ素」と打ち込んでみると、「美の味方」「奇跡のミネラル」「骨を強くする」「シミ、シワの予防に」などなど、さまざまな効能を謳うサイトがヒットしてきます。しかしこれらのサイトの記述には、首をひねりたくなる点が少なくありません。

 

ケイ素とは何か

我々の体を作る一番大事な元素は、炭素です。DNA、タンパク質、脂肪など、人体を形作る物質はほとんど、炭素を骨組みとして持っています。

 

ケイ素は、周期表でこの炭素の真下に位置しますので、いわば炭素の弟分ということになります。ただし、ケイ素と炭素には共通点もありますが、実際にはかなり化学的性質が異なり、自然界でのありかも違います。

 

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ケイ素の別名はシリコンで、純粋なものは半導体としてパソコンや携帯電話などに広く用いられます。ただし、ケイ素は酸素と結びつく力が強いため、自然界では純粋な形では存在しません。

 

ケイ素は、地球の表面上で酸素に次いで2番めに多く存在する元素で、重量でいえば約4分の1を占めます。こんなにもたくさん存在するのは、ケイ素が岩石の主成分だからです。土や砂や石などは、ケイ素と酸素にいくつかの元素が結びつき、硬いネットワークとなったものです。

 

これほど自然界に多く存在していながら、ケイ素は不思議なほど生命とは縁が薄い元素です。藻類や、イネ科の植物などにケイ素を利用しているものがいますが、ほとんどの動物において、体内のケイ素はごくわずかです。おそらくは、酸素と結びついて不溶性の硬い塊(要するに石)になりやすい性質が、動物とは相容れないのでしょう。

 

生体とケイ素は親和性が低い

このようなわけで、ケイ素は人体において、これといった重要な役目は知られていません。人体の存在量も、約20ppm(体重の5万分の1)とごくわずかです。動物実験レベルでは血圧を低下させたなどの報告はありますが、十分な検討がなされている状況とはとてもいえません。人体での作用はなおさらです。

 

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厚生労働省の定める「日本人の食事摂取基準」では、亜鉛、セレン、マンガン、クロムなどの摂取基準を定めていますが、ケイ素については特に規定がありません。前述のように、ケイ素は土などの主成分ですから、さまざまな形で気づかぬうちに体内に入ってきており、わざわざ摂取する必要はないのです。

 

「ケイ素はコラーゲンを束にして丈夫にするため、ケイ素不足になると肌にシワやたるみが現れる」と述べたサイトなどもありますが、ケイ素にそうした役割はありません。「ケイ素に、活性酸素除去作用がある」と宣伝しているサイトもありますが、純粋なケイ素にもシリカ(ケイ素と酸素が結びついたもの)にも、そうした作用はありません。「ある種のケイ素化合物が動脈硬化を防ぐ」といった主張もありますが、動物実験において否定的な結果も報告されています。

 

シリカはほぼ砂のようなものであり、水に溶けもしなければ化学反応を起こすわけでもありません。すなわち、シリカを飲んでもよいことは期待できず、よくて体内を素通り、悪ければ体組織に損傷を与えることにもなりかねません。ケイ酸ナトリウムなど水溶性の化合物もありますが、酸性になるとガラスのように固まりやすいので、よい作用は期待できないと思われます。

 

こうした状況にもかかわらず、ネット上にあふれるケイ素サプリの広告を見ていると、ウェブで正しい健康情報にたどり着くのは本当に難しいことになってしまったと実感します。SNSで見たから、有名人が使っているからと手を出してしまう前に、眉につばをつけて考える必要がありそうです。


出典:KENKO JIMAN編集部(サイエンスライター:佐藤健太郎)