[archive]1日1杯の飲酒で乳がん発症リスクが上昇するが、運動でリスクが低下するかもしれない

薬学博士編集 / 執筆 : FRONTEOヘルスケア

さまざまな因子が乳がんの発症リスクに影響することが知られています。1日1杯の飲酒でもリスクが高まりますが、運動によってリスクを下げることが可能なようです。また乳製品や緑黄色野菜にもある種の乳がんの発症リスクを下げる効果がありそうです。

1日1杯のアルコールでも乳がんの発症リスクは高まるようです。米国がん研究協会(AICR)と世界がん研究基金(WCRF)の研究チームは、種々の生活習慣が乳がんに影響を及ぼすというエビデンス(科学的根拠)についての新たな報告書を発表しました。

今回の報告書では、激しいランニングや自転車漕ぎが閉経前後の乳がん発症リスクを低下させることも報告されています。中強度の運動が閉経後のリスクを低下させるという以前から知られていた知見も再確認されたということです。

「個々の研究だけでは、結果が肯定的だったり否定的だったりと混乱が起きやすいのです」と報告書の筆頭研究者でフレッドハッチンソンがん研究センターのがん予防専門家であるアン・マクティアナン博士は語っています。

「この包括的でかつ最新の報告によって、種々のエビデンスがより明確になりました。身体を動かす生活習慣、健康体重を維持することと飲酒を控えること。これらすべてが女性の乳がん発症リスクを低下させるのです。」

 

飲酒、早歩き、母乳育児

今回改定された報告書『食事、栄養、身体活動と乳がん』は、世界中の関連する科学研究を系統的に収集して評価したもので、初版は2010年に出版されました。報告書では1,200万人の女性と26万件の乳がん症例を含む119件の研究が分析され、強いエビデンスが示された因子と限定されたエビデンスが示された因子にわけて解説しています。

強いエビデンスがあるとは、多くの信頼性の高い研究で確認され、かなり確からしい、という意味です。報告書では強いエビデンスがある因子として、定期的な少量飲酒を挙げています。1日約10gのアルコール(コップ1杯のビール、グラス1杯のワイン)を摂取する女性では、乳がん発症リスクが閉経前は5%、閉経後では9%高かったということです。

また、リスクを低下させる強いエビデンスの存在する因子として、早歩きなどの定期的な高強度運動が挙げられています。最も活発に運動している閉経前および閉経後の女性では、最も運動しない女性に比べてリスクが各々17% と、10%低かったということです。

他にも、リスクを高める強いエビデンスの存在する因子として、肥満(BMIが25以上)や急激な体重増加が、逆にリスクを下げる因子として、母乳育児の経験のあることが挙げられています。

 

新たな発見:乳製品と野菜

報告書ではまた、限定されたエビデンスのある因子についても言及しています。限定された、というのは強いエビデンスほどには確信をもって断定できないけれども、可能性のありそうなエビデンスのことです。

非でんぷん質の野菜を良く摂取する女性では、エストロゲン受容体(ER)陰性乳がんのリスクが低いこと、また、乳製品・カルシウムの多い食品、カロテノイドの多い食品を良く摂取する女性では、いくつかのタイプの乳がんのリスクが低いことについての、限定されたエビデンスがみつかったということです。また、ウォーキングやガーデニングといった中強度の運動をする女性は、リスクが13%低かったということです。

「こうした関連性については、興味深いものの、さらなる研究が必要です」とマクティアナン博士は語っています。「これらの知見は、女性が、より多くの非でんぷん質で、カロテノイドを豊富に含む様々な野菜を摂取することからなんらかの利益を受けるであろうことを示唆しています。それはまた女性の体重増加を抑える効果もあるのです。体重もまた、がんの重要なリスク因子です。」

 

変えることのできる発症リスク

乳がんのリスク因子には、加齢や、早期閉経、家族歴のようなものもありますが、その多くは自分では変えようがありません。でも食事や運動は自分で改善することが可能です。

「まだ運動習慣がないのであれば、まず運動を始めること。既に運動しているのであれば、より長く、より強度の高い運動にチャレンジすることができます。同様に、野菜や果物を多く摂り、お酒はできるだけ少なくすることで、乳がん発症リスクは下げられるのです」とAICR栄養プログラムリーダーのアリス・ベンダーは語っています。


出典:『米国がん研究所

出典:KENKO JIMAN編集部(薬学博士編集:山野秋生)