[archive]がん患者が症状を報告するWebシステムに生存期間延長の効果を確認

医学博士編集 / 執筆 : FRONTEOヘルスケア

「がん患者がタブレットなどのWebツールを利用して症状をリアルタイムで医療者に知らせることが、生存期間の延長につながる」という結果が発表されました。2017年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会のプレナリーセッションで2017年6月4日に発表された演題の内容について、ASCOが学会ホームページ上で公開しています。

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この記事の要点

  • がん化学療法中の患者を対象に、「症状自己報告Webシステム」の効果の検証が行われた
  • このシステムは、患者がオンラインで週に1回症状を医療者に自己評価・申告するもの
  • 重度の症状や症状の悪化が報告された場合には、看護師にメールで通知が届くシステムにもなっている
  • このシステムを利用した結果、利用しなかったグループと比べて全生存期間が中央値で5カ月延長した
  • 看護師に届いた通知メールは迅速な医療的処置につながった

プレナリーセッションは、5,000を超える演題のうち、患者のケアにもっとも大きく影響すると思われる4演題が選ばれて発表される場です。研究の筆頭著者は米国ノースカロライナ大学ラインバーガー総合がんセンター医学部教授のイーサン・M・バッシュ医師で、ASCOのがん克服基金より資金提供を受けてこの研究が行われた当時は、ニューヨークのスローンケタリング記念がんセンターで診療に携わっていました。

症状を週に1回5段階で自己評価する

研究の対象者は、2007年9月から2011年1月の間に外来で抗がん剤治療中だった、26歳から91歳までの進行性固形がん(泌尿生殖器がん、婦人科がん、乳がん、肺がん)患者766人(白人86%、女性58%)です。対象者はランダムに「医師が患者の体調を診察して記録するグループ(通常治療群)」と「タブレットを使用して症状を報告するグループ(介入群)」のどちらかに割り振られました。

通常治療群となった人は、来院時に体調についてがん専門医と話をし、次回来院までの間に何か不安な症状があれば電話で相談するように指示されました。

介入群となった人は、「STAR(Symptom Tracking And Reporting:症状の追跡と報告)」と呼ばれる研究用に開発されたWebシステム(市販されていない)を利用しました。STARは、タブレットや公共端末を使って自宅や化学療法の診察室からリモートで症状を報告できるシステムです。化学療法中によくみられる12の症状(食欲減退・呼吸困難・疲労感・ほてり・悪心・疼痛など)について、週に1回5段階評価でSTARを通じて自己申告し、医師は診察時に確認しました。また、重度の症状や症状の悪化が報告された場合には、リアルタイムで看護師にメールが届きました。STAR利用の効果は、通常治療群と介入群とでアウトカム(転帰、治療結果)を比較することにより評価しました。

介入により生存期間が5カ月延長

介入群となった人の中にはインターネットの使用経験がほとんどない人もいましたが、全員、化学療法を受けている間に起こった症状を、自ら進んで週に1回定期的にWeb上で報告できました。

生存期間の評価は、2016年6月に行いました。跡期間の中央値は7年でした(調査時点で766人中517人(67%)が死去)。全生存期間(原因を問わず治療を開始してから亡くなるまでの期間)を、統計的手法を用いて比較したところ、通常治療群よりも介入群の方が中央値で5カ月長かったという結果が得られました(通常治療群:26カ月、介入群:31.2カ月)。

看護師に届いた通知メールの効果としては、重篤な症状や症状の悪化の報告中4件に3件以上において、看護師が速やかに医療的処置を行うことができました。

大規模臨床試験による検証がスタート

この研究には前報があり、前報では、「STAR利用」と、「生活の質(QOL)の向上」ならびに「救急搬送や入院回数の低下」との関連性が示されました。また、通常治療群と比べ、介入群は抗がん剤治療を長期に受けることができたと報告されました。

今回までの結果を受け、次のステップとして、全米の実際の診療現場を対象とした大規模な臨床試験による検証がすでに始まっています。この臨床試験では、より使いやすくなった最新オンラインツールを個人のパソコンやモバイルデバイスで使用できるようになっています。

今回の発表についてバッシュ医師は、「化学療法中の患者は、重い症状を発症する場合が多いが、医師や看護師がこうした症状に気づかない例がほぼ半数にのぼります。」「今回の結果は、Webによる症状報告システムを利用して、患者の訴えをケアチームに知らせることが、苦痛を緩和し、患者のアウトカムを改善する措置につながることを示しました。」と述べました。


参考文献


出典:KENKO JIMAN編集部(医学博士編集:二瓶秋子)