[archive]テアニンの効用:ストレス軽減や睡眠改善にもなる、お茶特有の成分とは

サイエンスライター / 執筆 : FRONTEOヘルスケア

仕事の後に、長い会議の合間に、旅の帰りに、我々は当たり前のようにお茶を飲みます。茶を好んで飲むのはもちろん日本人だけではなく、緑茶・紅茶・ウーロン茶など形態を変えて、中国やイギリスなど世界各国で愛飲されています。茶はコーヒーと並んで、世界で最も成功したソフトドリンクといえるでしょう。

 

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茶には気持ちを落ち着かせ、ストレスを低減する作用があり、これが好んで飲まれる理由のひとつでしょう。コーヒー同様に頭をすっきりさせる効果もありますが、神経を興奮させる作用はコーヒーより低く、穏やかな気分にさせてくれます。

 

コーヒーと茶の成分の違い

コーヒーと茶の生理作用成分のうち、最も主要なのはカフェインです。摂りすぎると眠れなくなるなど、興奮作用があることはよく知られています。最近流行のエナジードリンクにも多量に含まれており、その作用の大半はカフェインによると考えられます。

 

では、コーヒーと茶の作用の差はどこから来るのでしょうか?ひとつは、カフェイン含有量の差であると考えられます。ドリップコーヒー100mlあたりのカフェイン量は約90mg程度ですが、紅茶・緑茶・ウーロン茶は約20mg程度に過ぎません(ただし、お茶の中でも玉露はカフェインが非常に多く、100mlあたり120mgにも達します)。

 

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もうひとつの差は、茶に特有の成分であるL-テアニン(L-Theanine、以下テアニンと記す)の存在です。植物の中でも、茶とその近縁種以外からはほとんど見つかっていない、珍しい化合物です。テアニンの名も、茶の旧学名である「Thea sinensis」から採られているほどで、まさに茶を代表する物質といえるでしょう。

 

テアニンはアミノ酸の一種

テアニンは茶のうまみ成分の一種で、わずかに甘味があります。化学の目で見ると、昆布などのうまみ成分であるグルタミン酸に非常に近い構造であり、うまみがあるのも納得が行きます。

 

テアニンを摂取した人の脳を調べてみた結果、眠気を引き起こすことなく、気分をリラックスさせる作用があることがわかっています。また、カフェインとテアニンを同時に摂取したところ、カフェインだけ、あるいは偽薬を摂取した人よりも仕事の効率が上がり、速く正確に作業を完了したということです(Neuropharmacology. 2012 62, 2320)。両者を含んだ茶は、仕事中に飲むのに最も適した飲み物といえるでしょう。

 

カフェインといえば眠気覚ましの作用がよく知られていますが、テアニンには睡眠改善の作用が研究されています。たとえばテアニンを摂取した人の脳波を調べると、α波が増強されたとの結果があります(日本農芸化学会誌 72, 153 (1998))。α波は睡眠時に観察される脳波ですので、テアニンはスムーズな眠りを促す可能性があるといえます。

 

テアニンはグルタミン酸やGABAの過度な作用をマイルドにする

こうした作用は、分子レベルでも解明されつつあります。先ほど述べた通り、テアニンはグルタミン酸に近い構造です。グルタミン酸は脳内で伝達物質としてはたらき、受容体と呼ばれる場所に結合します。グルタミン酸は鍵、受容体は鍵穴にあたっており、鍵がはまると神経細胞が興奮するようにできています。

 

グルタミン酸に近い構造であるテアニンは、本物の「鍵」であるグルタミン酸の代わりに受容体に結合し、鍵穴をふさいでしまいます。これにより神経の興奮を抑え、穏やかにさせるという仕組みです(Biosci Biotechnol Biochem 66, 2683 (2002)) 。

 

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神経を興奮させるグルタミン酸と逆に、γ-アミノ酪酸(GABA)という脳内物質は、神経の興奮を抑えるようにはたらきます。テアニンはこのGABAの量を増やすように作用して、興奮を抑えるという実験結果が出ています(Chem Pharm Bull 19, 1257 (1971))。テアニンは両面から、過剰な神経の興奮を抑えてくれるわけです。一過性のストレス改善といった作用も、このあたりに関連していると見られます。

 

その他、茶を日常的に飲んでいる人は、統合失調症など各種精神症状が少ないとの疫学調査もあります(Psychopharmacology 219, 1099 (2012))。こうした作用についても、動物実験レベルとはいえ分子生物学的な裏付けが進みつつあり、その効能のほどが明らかになっていくでしょう。

 

茶の実力を知り、これからも親しもう

テアニンは毒性が低く、極めて安全な化合物であるのもよいところです。一杯の茶に含まれるテアニンは10mg程度ですが、その250倍にあたる2500mgを毎日摂取しても、問題は起きなかったということです。事実上、無害といって差し支えないでしょう。

 

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最近では、テアニンのサプリメントなども売り出されています。安全かつ効果が十分実証されているという意味では、有用なサプリメントのひとつに挙げられるかと思います。ただし先ほど述べたような、カフェインとの相乗作用もあるので、緑茶なり紅茶なりを一日数杯飲むという形が、一番推奨されるでしょう。

 

こうして見てくると、古来楽しまれてきた茶の実力は、なかなかのものであることがわかります。仕事や人間関係でストレスを感じた時には、下手な精神安定剤などを飲むよりも、一杯の茶を口にするという選択肢は大いにありと思います。


出典:KENKO JIMAN編集部(サイエンスライター:佐藤健太郎)