[archive]医療ニュースの正しさを判断する8つの方法

医学博士編集 / 執筆 : FRONTEOヘルスケア

がんの予防方法や検診、危険因子、新しい治療法など、がんに関するニュースはさまざまなメディアで取り上げられます。ところが、がんを含めた医療の最新情報は、頻繁に変わることもあり、新たなブレークスルー発見のニュースの翌週にはその妥当性に異議が唱えられる場合もあります。こうした事例からも、どのニュースを信用するべきか、また、信用したとして自分の習慣や嗜好を改めるべきか判断することは難しいとわかります。

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がんに関するニュースが自分に当てはまるかどうかを知るには、主治医に相談するのが一番です。ただ、自分で判断する場合は、ニュースの根拠となる最新研究の信頼性や重要度の見分け方を知っておくことが肝心です。例えば、研究が行われた場所、同じテーマに関する既知の情報との整合性、研究の進み具合、数値の算定基準などの確認が、情報の判断に必要となります。

米国臨床腫瘍学会(ASCO)の患者向けサイト「Cancer.Net」に、医療ニュースの見極めに役立ちそうな8つの確認事項が紹介されています。順に見ていきましょう。

目次
1. ニュースの発信元は誰か
2. 調査・研究に基づく場合、初出はどこか
3. 範囲は「当該分野全体」か、「ひとつの研究についてのみ」か
4. どのような研究段階のニュースか
5. 「有益な結果」の定義は正しいか
6. 「相対リスク」か「絶対リスク」か
7. 話を誇張していないか
8. 主治医や担当スタッフの見解は

 

1. ニュースの発信元は誰か

最も信頼性が高く正確な医学関連情報を提供していると言えるのは、行政機関や非営利団体がスポンサーとなっているウェブサイトです。ウェブサイトのスポンサーは、「組織紹介」ページや、ホームページへのリンクなどで確認することができます。

全国紙・ブロック紙・全国ネットのテレビなど、大手の報道機関には、科学・技術や医療を専門とする記者がいます。専門記者は、一般的に医療情報の分析経験が豊富です。最新情報を入手したら、これまでの研究との関連性を考えながら、できる限り的確に報道するように努めています。

病院や大学、研究所併設のがん専門病院などのプレスリリースは、当該医療機関による研究内容で質が高い一方、研究成果が誇張されやすい面もあります。

ブログや中小規模の報道機関は、既に全国的に報道されているニュースを取り上げる場合があります。たいていは良質な記事ですが、中には誌面や時間を節約のため、重要な情報を割愛することもあります。また、専門記者が不在のブログも多いといえます。

 

2. 調査・研究に基づく場合、初出はどこか

一流の医学雑誌に掲載された研究内容に関するニュースは、信頼性が高いといえます。

一流と言われる医学雑誌は、例えば「Journal of Clinical Oncology」「JAMA(米国医師会誌)」「Journal of National Cancer Institute」「Lancet」「New England Journal of Medicine」「Science」などの査読誌をさします。このような査読誌には、一般に厳格な査読(ピアレビュー)を通過しないと論文が掲載されません。言い換えると、論文の内容を十分に理解できる同じ分野の専門家複数名が投稿論文を読んで精度・重要度・結果の再現性などの観点から審査(査読)し、そこで承認された論文だけが出版を許されているのです。

ただし、一流の医学雑誌で新しい研究結果が発表されたからといって、これまで標準的に行われてきた診療方法が一度に変更されるということはありません。

 

3. 範囲は「当該分野全体」か、

「ひとつの研究についてのみ」か

新しい治療法や知見に関するニュースは、その内容の範囲が信頼性判断のひとつの目安になる場合があります。

新しく発表されたひとつの研究のみから、新しい治療法や知見に関するリスクや有益性を示すことは、通常できません。また、新しい研究の成果は、長期的な影響を考察できているとは限りません。これまで標準的に行われてきた治療の方法などが変更されるのは、長い年月をかけて多くの研究が重ねられ、十分な証拠が得られてからであることがふつうです。

気になる研究があった場合には、主治医や担当の医療スタッフに相談してみるのがよいでしょう。

 

4. どのような研究段階のニュースか

「医療の研究」と一口に言っても、新しい治療法、副作用、予防方法など、研究対象はさまざまです。さらに、培養組織や動物を用いた研究の場合、得られた知見が人間にも当てはまるかどうかを調べる前なので、日常生活に取り入れるのはまだ早すぎます。培養組織や動物は、治療の仕組みを詳細に理解するための初期のモデルとして必須ですが、人間に対する作用は、やはり人間を対象として調べなくては分からないのです。

人間を対象とした医学的調査・研究試験は「臨床試験(治験)」と呼ばれ、「相(フェーズ)」と呼ばれる複数の段階に分けられます。各相の目的は以下のとおりです。

目的
第Ⅰ相試験 動物実験で安全性が証明された新しい薬や治療法が、人間に対しても安全であるかを検証する。
第Ⅱ相試験 新しい薬や治療法の有効性を評価し、安全性についてより詳細な情報を得る。有効活用とは、例えば「特定のがんを明確に縮小させる効果」等を指す。
第Ⅲ相試験 特定の疾患(特定のがんなど)を有する少人数の患者に対して有効であると示された新しい薬や治療法を、同じ疾患に対する現行の標準治療と比較する。最も重要視されるのは、生存期間とQOL(生活の質)に関するデータを得ること。

 

第III相試験まで終わった段階で得られた情報をもとに、現在行われている診療が変更される可能性はありますが、I相、II相で得られた結果だけでは一般的に診療を変更するには早すぎるといえます。

 

5. 「有益な結果」の定義は正しいか

調査・研究で得られた有益な結果の中で、最も関心を集めるのは「全生存率」です。全生存率は、生存統計という手法で統計学的に計算される値で、判明するまでには長い期間を要します。そのため、「奏効率」や「無病生存率(期間)」などの項目を、全生存率の代わりに評価に用いる場合があります。

奏効率 がん治療における用語で、その治療を受けて腫瘍が縮小した人の割合。
無病生存率(期間) 治療後に、疾患の兆候がない状態で生存下人の割合(期間)。

 

このような項目で評価されていた場合、たとえその評価結果が良好であったとしても、必ずしも全生存率の改善につながるわけではないということを心得ておきましょう。

また、新しい治療法の試験の結果、「統計学的に有意」な改善が認められたと報告されることがありますが、その改善が必ずしも医学的に重要であるとは限りません。例えば、ある新しい治療法について大規模試験を行った結果、5年生存率がこれまでの治療法では50%だったのが51%に改善されたとしましょう。これは統計学的に有意な改善とみなされますが、新しい治療法が重大な副作用を引き起こすものであった場合、医学的に必ずしも重要な差であるとは言い切れません。

 

6. 「相対リスク」か「絶対リスク」か

がんの研究において、「リスク」とは、任意の人にがんが発生したり、治療後にがんが再発したりする危険度を指します。リスクには、「相対リスク」と「絶対リスク」の2種類があります。

相対リスク 特定のリスク因子をもつ煮との集団ともたない人の集団の間での病気発症率の比。例えば、特定のリスク因子を「喫煙」、病気を「がん」とすると、対象リスクは「(喫煙群におけるがん発症率)÷(非喫煙群におけるがん発症率)」で求められる。
絶対リスク その病気が発症する確率。任意の人が、特定の期間にその病気を発症する確立を、通常はパーセントで表したもの。

 

調査・研究のほとんどは相対リスクを示していることが多い一方で、絶対リスクは実際のリスクを明確に反映しているものであると言えるでしょう。ニュースでリスクについて取り上げられていた場合は、どちらのリスクのことかを確認しましょう。

 

7. 話を誇張していないか

誇張した内容の医療ニュースは信頼性が高いとは言えません。通常、薬や治療などの科学的な研究は、少しずつ段階的に進展していきます。医学において、飛躍的成功があるのは「まれ」であると覚えておきましょう。もしニュースに「飛躍的」「画期的」「特効薬」「妙薬」などの言葉が含まれていたら、誇張である可能性に気をつけましょう。

病気に対して即効性のある予防法や治療法は極めて「まれ」です。抗菌薬の「ペニシリン」など、例外的に即効性のある薬はありますが、特に、がんなどの複雑な病気が単独の治療法で治ることは、ほぼないに等しいと知っておきましょう。

また、がんに対する新しい治療法が、すべての患者に有益であることも「まれ」で、ほとんどの場合、副作用などのマイナス面が伴います。新しい治療の有益性だけでなく、副作用などのリスクについても中立的に記述しているかどうかも、信頼性を判断する材料になり得るでしょう。

 

8. 主治医や担当スタッフの見解は

例えば、ご自身ががんの治療を受けている場合、がんに関するニュースが自分に当てはまるかを見極める最良の方法は、主治医や担当の医療スタッフに直接聞いてみることです。今の病気や治療の状況とどのように関連しているかなど、根拠を持って説明できるのは、まさに治療をしてくれているスタッフに他ならないからです。もちろんがんに限らず、すべての病気において同じことが言えます。

 


参考文献


出典:KENKO JIMAN編集部(医学博士編集:二瓶秋子)