[archive]LDLコレステロール値はどこまで下げるべきか

薬学博士編集 / 執筆 : FRONTEOヘルスケア

新しいコレステロール低下薬であるエボロクマブによってLDLコレステロール値を極端に下げることは、心血管有害事象の発生リスクを有意に低下させ、安全性にも問題は認められなかったということです。

血清LDLコレステロール値は、低ければ低いほど心血管系の健康には良いのでしょうか?薬剤治療によって、10mg/dL未満という極めて低い値を安全に達成でき、心血管有害事象の発生リスクをさらに低下させることが可能であったと、米国ブリガム婦人病院の研究チームが発表しました。

2017年初め、研究チームは、薬物治療を受けている心血管疾患の高リスク集団において、PCSK9阻害剤のエボロクマブと呼ばれる最新のコレステロール低下薬を、従来のスタチン系薬剤による治療に追加で用いることで、LDLコレステロール値を従来以上に低下させることが可能であり、それによって安全かつ有意に心血管有害事象の発生を減らせることを報告していました。

PCSK9は、肝臓によるLDLコレステロールの血液中からの除去能力を低下させる作用があるたんぱく質です。エボロクマブは、日本では2016年に承認されており、適応は、「家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症(ただし、心血管イベントの発現リスクが高く、HMG-CoA還元酵素阻害薬で効果不十分な場合に限る)」となっています。

 

エボロクマブの有効性と安全性を追加検討

今回の報告は、エボロクマブの効果にいわゆる「底打ち」があるかどうかを検証したものです。すなわち、これ以上下げても追加のメリットが存在しないようなLDLコレステロールの最低値は存在するのか、そしてそのような極めて低い値にすることに悪影響はないのか、ということを確認するものでした。この研究結果は、2017年8月28日に開催された欧州心臓病学会で発表されると同時に、『ランセット』誌に論文掲載されました。

研究チームは、スタチン治療に加えてPCSK9阻害剤エボロクマブを投与することで、心血管死、心筋梗塞、脳卒中のリスクを20%低下させることを明らかにした上述の臨床試験から、25,982名のデータを用いて、LDLコレステロール値を極めて低い値にした場合の有効性と安全性を検証しました。

 

LDLコレステロール値は低いほどリスクが低下

解析の結果、2.2年以上の追跡期間中、心血管有害事象(心血管死、心筋梗塞、脳卒中を含む)の発生リスクは、LDLコレステロール値が20mg/dL未満まで低下するにつれて、漸次低下していき、特に10mg/dL未満を達成した患者では、100mg/dL以上だった患者に比べて、40%以上のリスクの低下が認められたということです。

「私たちの知見は、この効果には本質的に底打ちが存在しないことを証明しています。下がれば下がるほど、リスクの低下に結びつくのです。高リスクの患者に対して、通常の治療目標である70mg/dLをはるかに超えた低いレベルまでLDLコレステロール値を下げることで、安全性に対する大きな懸念なしに、さらに有害な心血管事象のリスクを減らすことができるということです」と主任研究者のロベルト・P・ジュリアーノ医師は語っています。

 

極端な低値による有害事象は観察されず

ジュリアーノら研究チームは、LDLコレステロール値と既知の有害事象の間には有意な関連はないと報告しています。また極端な低値が、認知機能や記憶力などにネガティブな影響を及ぼすこともないようだと述べています。

「以前の臨床試験の結果と今回の結果を併せて考えると、特に心血管有害事象のリスクが高い患者は、食事療法やスタチン治療で達成できる以上にLDLコレステロールを下げるべきかどうか、主治医と相談してみるのが良いと思われます」とジュリアーノ医師は語っています。


出典:『ランセット

出典:KENKO JIMAN編集部(薬学博士編集:山野秋生)