[archive]変わる健康の常識:最新の医学や科学に触れる機会を増やそう

サイエンスライター / 執筆 : FRONTEOヘルスケア

「○○を食べると風邪を引きにくい」「✕✕という習慣は体に悪い」といった話は、私達の身の回りにたくさんあります。こうした話は疑われることもないまま「常識」として心にしみつき、ほとんど無意識のうちにふだんの生活の中で実行されています。

 

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しかし、医学の世界は日進月歩です。こうした「健康の常識」に改めて科学の光が当てられてみると、誰もが当たり前と思っていたことが、実は間違いであったらしいといったケースも、中には出てきます。今回は、そうしたケースをいくつか取り上げてみましょう。

 

卵は1日1個まで?

鶏卵は栄養豊富な基礎食品ですが、食べるのは1日1個までにしておくべき――とは、誰もが聞いたことがあるのではないでしょうか。筆者も母親からそう聞かされて育ったので、2個めの卵を食べる時は、なんとなく罪悪感を覚えながら口に運んでいたものです。

 

1日1個と言われてきたのは、鶏卵にはコレステロールが多いからです。コレステロールはビタミンやホルモンの原料として体に不可欠な物質ではありますが、一方で動脈硬化の原因ともなります。このため数年前まで、厚生労働省の食事摂取基準にコレステロールも掲載され、その目標量(上限)が男性で1日750mg未満、女性で600mg未満とされていました。となると1個あたり約200mgのコレステロールを含む鶏卵は、あまり食べすぎないようにとされるのは当然でしょう。

 

しかし、以前ご紹介したように、コレステロールは体内でも作り出されており、その量は食事からの摂取量に合わせてコントロールされています。このため、食事のコレステロール含有量が多くても少なくても、血中コレステロール値にはさほど影響しないことがはっきりしてきたのです。

 

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というわけで2015年、コレステロールは食事摂取基準のリストから削除されました。今では、健康な人なら1日2~3個の鶏卵を食べることは問題ないとされています。ただし、すでにコレステロール値が高い人、遺伝的に高コレステロール血症が疑われる人などは、控えたほうがよいとされます。

 

卵アレルギーを防ぐには?

卵といえば、子供の卵アレルギーも問題になります。小さいうちは卵を摂取させないよう、気を配っている保護者も多いと思います。しかし最近になり、小児アレルギー学会は「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」を発表し、「生後6ヶ月ころから少量ずつゆで卵を食べて、体を慣らしてゆく方がよい」との方向性を打ち出しました。国内外の研究者による、複数の研究結果に基づくものです。

 

ただし、闇雲に誰にでも卵を食べさせろというわけではもちろんありません。提言の対象になっているのは、卵アレルギーのリスクが高いアトピー性皮膚炎の赤ちゃんの場合です。なおかつ、卵を食べさせるのは湿疹を治してからにすること、必ず医師の指導を受けながら、少しずつ量を増やしていくことなど、いくつかの条件がついています。その他詳細については、学会の補足ページをご覧ください。

 

今後研究が進めば、こうしたアレルギー対策は他の食品にも適用されていく可能性がありそうです。ただしアレルギーは重篤な症状を引き起こすこともありますので、素人が安易に自宅で試すべきものではないでしょう。

 

魚の焦げは避けるべき?

「がんの原因になるから、魚などの焼け焦げは食べない」というのは、1978年に国立がんセンターの発表した「がん予防の12か条」以来有名になり、今や一般常識として定着しているのではと思います。しかしこれに関しても、近年認識が覆りつつあります。

 

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焼け焦げの中にはヘテロサイクリックアミンという化合物が含まれており、これががんを引き起こすとされてきました。しかしその発がん性は高いものではなく、サンマの尾の焼け焦げを10~15年の間毎日2万匹分食べ続けて、ようやくがんを発生する程度だということです。また、実験に用いられたラットより、ヒトの細胞はずっと焼け焦げによる発がんを起こしにくいとの研究もあります(左巻健男『暮らしのなかのニセ科学』平凡社新書より)。

 

こうしたことから、2011年に発表された「がんを防ぐための新12か条」からは、「焦げた部分は避ける」という項目は削除されました。もちろん焼け焦げの危険がまったくのゼロというわけではないでしょうから、除いて食べるに越したことはありませんが、あまり神経質になるべきことではなさそうです。それよりはタバコの副流煙や、食塩のとりすぎに気をつけるほうが、よほど意味のあることと思われます。

 

このように、健康の常識はどんどん変わっていっており、他にもアップデートすべき知識はたくさんあります。今回書いた事柄も、数年後には古くなっている可能性も十分あるでしょう。一方で、そうした間隙を突いて一儲けをたくらむ、ニセ健康情報も巷には溢れています。情報の真贋を見極め、正しく身につけるリテラシーは、今後ますます重要になっていきそうです。


出典:KENKO JIMAN編集部(サイエンスライター:佐藤健太郎)