[archive]ポジティブな臨床試験のニュースはネガティブな結果の2倍流れる

医学博士編集 / 執筆 : FRONTEOヘルスケア

「新聞や雑誌などでは、ポジティブな臨床試験結果の方が、ネガティブな結果よりもニュースとして取りあげられやすい」との研究結果が、2017年9月にスペインのマドリードで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2017)で発表されました。

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ランダム化比較試験結果の報道のされ方を調査

カナダ、イスラエル、スペイン、スイス、スロベニアの国際共同研究グループによって行われたこの研究は、ESMO 2017の公衆衛生・医療経済学分野で発表されたポスター発表47件の中から、ベストポスターに選ばれました。

ランダム化比較試験とは、臨床研究の対象者を、恣意的な偏りが生じないようランダムに2つのグループに分け、片方のグループは治療などの介入を行い(介入群)、もう片方のグループは観察のみにする(対照群)などして介入の効果を比較検討する方法をいいます。

研究グループは今回、がんのランダム化比較試験結果の広報活動に、一般紙/誌がどのような役割を果たすかを調べました。これに加え、臨床試験が学会発表や専門誌掲載の前に一般紙/誌で取りあげられるのはどのような場合かについても研究しました。

 

ポジティブな結果はネガティブな結果の2倍報道される

研究グループは、2005年1月から2016年10月の間に完了した乳がん、大腸がん、肺がん、前立腺がんの第3相ランダム化比較試験、計180件を分析対象としました。このうち、一般紙/誌に取り上げられた試験は半数以上(52%)あり、4分の1以上(27%)が学会や専門誌で発表される前に一般紙/誌に取りあげられていました。

詳しい分析の結果、臨床試験の結果が、学会や専門誌に先立って一般紙/誌で「早期報告」される可能性は、試験結果がポジティブな場合の方がネガティブな場合よりも2倍高いと分かりました。治療法で比較すると、分子標的療法は化学療法の約5倍、免疫療法は化学療法の約8倍早期報告の可能性が高く、さらにがん種で比較すると、前立腺がんは乳がんの3倍高いことが分かりました。

 

臨床結果の発表方法に関する新たな視点

この結果を受け、研究の筆頭著者であるカナダのプリンセス・マーガレットがんセンターのドーメン・リブニカー医師は、一般の新聞や雑誌の読者はがんの治療薬開発に関する正確な知識を必ずしも得られていない場合があると懸念を示しています。

今回、この研究をベストポスターに選んだ審査員であったスペインのバレンシア大学教授マーティン・モレノ医師は、「患者や一般の方はがん情報を一般の新聞や雑誌から得ることが多いため、これは重要なテーマといえます。このポスター発表は重要な問題を指摘しました。メディアには、専門誌や学会の専門委員会で検証済みの臨床試験を取りあげてもらう方が好ましいでしょう」と述べました。さらに、「この研究の発表者は複数の国から集まった若い研究者グループで、今まであまり研究されていない興味深いテーマを浮き彫りにしました」と付け加えました。

 


参考文献


出典:KENKO JIMAN編集部(医学博士編集:二瓶秋子)