[archive]肺がん患者の支持療法向上に「ヨガ」が効果的との研究発表

医学博士編集 / 執筆 : FRONTEOヘルスケア

肺がん患者とその介護者にとって、ヨガは身体的・精神的に有益な影響をもたらすという結果が、実現可能性試験(フィージビリティ・スタディ)により得られました。この研究は、米国国立衛生研究所から資金提供を受け、米国MDアンダーソンがんセンターのキャサリン・ミルベリー博士を中心とした研究グループによって行われました。

ここでは、2017年10月にカリフォルニア州サンディエゴで開催された「腫瘍学における緩和ケアおよび支持療法のシンポジウム」で発表された内容をご紹介します。

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この記事の要点

  • ヨガが肺がん患者とその介護者の支持療法向上に効果的かどうかを調べる研究が行われた
  • ヨガに着目した理由は、乳がんで実績があり、ペアで行いやすい上に呼吸法を大切にする運動だから
  • 比較試験の結果、ヨガを実践した患者は身体機能の向上が見られた
  • さらにヨガを実践した患者と介護者はともにメンタルヘルスの改善が見られた
  • 今回の研究により、ヨガが肺がん患者の支持療法向上の手段のひとつとなることが示された

 

肺がん患者の支持療法向上に向けて

がん患者の生活の質(QOL)を改善するために行う治療を「支持療法」といいます。肺がんでは、行動的支持療法の研究がほとんど行われていません。研究グループは、肺がん患者に対する支持療法を向上させるために、患者・介護者ともに、身体面・精神面の健康度を高める方法を見出したいと考えました。そして、その手段として、何らかの運動が良いだろうと考えました。

運動を検討した理由はいくつかあります。運動は何歳から始めても遅すぎるということはありません。また、化学療法や放射線治療を受けている期間中、患者が運動可能であることが、以前の研究から分かっています。加えて、乳がんの人に対して運動療法が効果的であることも明らかになっています。

さらに、今回、介護者も患者と一緒に運動するのが良いと考えました。なぜなら、患者よりも介護者のほうが不安や睡眠障害を抱えている場合があり、一緒に運動をすることが両者にとって有益と考えられたからです。

 

「ヨガ」に着目した理由は

肺がんの人は通常、乳がんの人と比べて症状が多く、高齢で、体調も良くない傾向があります。こうしたことを考慮に入れて、研究グループは「ヨガ」を選びました。ヨガは簡単に行うことができ、その人の要求に合わせて動作や負荷を変えやすい運動法だからです。また、ヨガはパートナーも参加しやすいというのも選択の重要ポイントでした。

さらに、ヨガは呼吸法を重視するため、息切れしがちな肺がん患者に適していると考えられました。例えば、今回の研究に採用されたヨガのポーズの中には、チェストオープナーと呼ばれるものがあります。これは、文字通り深呼吸とともに胸を開くことを特に意識したエクササイズです。

チェストオープナーの一例

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「ヨガ受講組」と「受講待ち組」で比較した

研究グループは、今回の研究対象である、肺がん患者とその家族介護者のペア47組に研究参加を呼びかけました。患者は全員、外科手術では切除できない進行性非小細胞肺がんで、胸部への放射線療法を受けていました。また、ほとんどの患者は化学療法も受けていました。患者と介護者のペアは、「ヨガ受講組」と「ヨガ講習受講待ち組(対照群)」のどちらかにランダムに割り振られました。

研究参加者のペアは、登録時に、SF-36と呼ばれるアンケートに回答しました。SF-36は、生活の質について自己評価するための36項目のアンケートで、世界で広く使われているものです。また、肺がん患者は、登録の際に6分間の歩行試験も行いました。

このアンケートと歩行試験を、患者の放射線療法の終了時と、その3カ月後に行いました。そして、その間にヨガ講習を受けていたグループと受けていなかったグループとで、アンケートや歩行試験の結果の変化に差があるかを評価しました。

ヨガのプログラムは、「姿勢」「呼吸」「瞑想」の3つに重点を置いて、一回60分のヨガを15セッション行うものとしました。これは、以前インドで行われた乳がん患者に対するヨガの研究成果と、それを受けて米国で行われた大規模試験による裏付け結果を参考にしました。

 

本人にも介護者にも有益な影響があった

研究参加を呼びかけた47組のうち、研究に同意したのは32組、最終的にアンケートと歩行試験の評価をすべて完了したのは26組でした。ヨガは、全部で15セッションのうち、平均完了セッション数は12セッションでした。26組の患者および介護者の平均年齢はそれぞれ73歳と62歳で、介護者の過半数が患者の配偶者でした。

ヨガを実践した患者と実践しなかった患者とで6分間の歩行試験の評価結果を比較したところ、ヨガを実践した患者のほうが、身体機能が有意に良好でした。評価スコアを比較すると、ヨガ受講組:ヨガ受講待ち組=478:402という結果でした。

また、生活の質に関するアンケートの比較結果から、ヨガを実践した患者では、仕事や日常の活動を行うための持久力が向上し、メンタルヘルスも改善されていることがわかりました。介護者についても、ヨガを実践したグループで、働いている間の疲労感や持久力の面で改善がみられていました。

研究に参加した患者からは、「ヨガのセッション中にがんのことを忘れられるのは良かった」という意見が寄せられました。また、患者と介護者どちらからも、「新しいことを一緒に学んで楽しめた」という声が聞かれました。

 

今後の目標は「より包括的な知見を得る」

今回の研究は、あくまで「実現可能性試験」でした。したがって、ヨガ受講による具体的な効果を断言できるものではありません。また、ヨガが水泳やハイキングなど、他の運動より優れていることを示したわけでもありません。さらに、今回の研究の対象者は、MDアンダーソンがんセンターの患者とその家族のみで、人種的に多様ではありませんでした。次の研究ステップに進み、より包括的な知見を得ることが今後の目標であると研究グループは述べています。

一方で、今回の研究により、ヨガが肺がん患者の支持療法向上の手段のひとつとなることは示されました。

ミルベリー博士は今回の発表を、「本研究に参加した患者と介護者のペアの多くが『これからも自分たちでヨガを続けていきたい』と言っていたのを聞き、大変うれしく思いました」という言葉で締めくくりました。

 


参考文献


出典:KENKO JIMAN編集部(医学博士編集:二瓶秋子)