転倒転落予測システム

電子カルテ内の患者の状態や日々の看護記録を人工知能「KIBIT」で解析し、入院患者の転倒・転落のリスクを算出・アラートを発信するシステムに、NTT東日本関東病院と共同で取り組んでいます。患者の高齢化などにともない、入院中の転倒・転落ケアの重要性は高まる一方です。こうした問題について、医療現場では、転倒のリスクを予測する評価シートなどを使い各種対策も行っていますが、リスク評価の作業自体が看護師の本来の「患者のケア」業務を圧迫することも多く、また、看護師が交代で勤務するなか、すべての患者を常に同じレベルで見守るのにも限界がありました。そこで、看護師が日々の業務の中で記入する入院患者の看護記録を参照することで新たな入力の負担を抑えつつ、転倒転落のリスクを低減する新しい仕組みが求められています。

入院患者数 約132万人

※ 出典:厚生労働省「平成27年度 医療の質の評価・公表等推進事業報告書」
パートナー :
NTT東日本関東病院

転倒転落予測システムによって解決する課題

厚生労働省「医療の質の評価・公表等推進事業」報告書(※1)によると、100床規模の病院で年1人、病院内転倒による重症者が発生しています。病院内での転倒率はここ数年間、横ばいで推移しており、そのうち要治療率や重傷率も横ばいとなっています。Morse Fall Scaleなどのリスク予測手法はアセスメントや記録業務の負担も大きく、現場の負担を増やさずに、より精度の高いリスク予測手法が求められています。

病院経営の視点でみると、病院内転倒転落が発生することで、訴訟リスクも発生します。多発性脳梗塞で入院していた老女(72歳)が病室内で転倒して死亡した事故では担当看護師に介添えを怠った過失があり、その過失と転倒との間に因果関係があるとして、病院側の不法行為責任が認められた裁判事例もあります(※2)。

転倒転落防止に対しては、国際的な医療施設評価認証機関であるJCIのInternational Patient Safety Goalsでは、転倒転落のリスク評価が必要とされており、日本医療機能評価機構の評価項目でも、転倒・転落防止対策を実践しているかが評価要素とされています。

医療現場では、転倒のリスクを予測する評価シートなどを使い、各種対策を行っています。しかしリスク評価の作業自体が看護師の本来の「患者のケア」業務を圧迫することも多く、また、看護師が交代で勤務するなか、すべての患者を常に同じレベルで見守るのにも限界があります。

当システムの共同研究パートナーであるNTT東日本関東病院では、過去にも医療安全のインシデントレポートをテキスト解析してリスク予測を行う取り組みを行ったそうですが、当時のシステムでは、あらかじめ決められたフォーマットに決められた情報を細かく入力する必要があり、逆に現場の業務負担が増える結果となり、有効な知見を得るまでの解析がなかなかできない状態でした。

そこで、電子カルテに入力されている看護記録などのテキスト情報をKIBITで解析し、患者さんごとの転倒リスクを予測できないかという研究をはじめました。

FRONTEOヘルスケアではNTT東日本関東病院と共同で、電子カルテ内の患者の状態や日々の看護記録を人工知能「KIBIT」で解析し、入院患者の転倒・転落のリスクを算出・アラートを発信するシステムの研究開発に取り組んでいます。

※1:平成27年度 厚生労働省 医療の質の向上・公開推進事業 全日本民医連報告

※2:東京高等裁判所平成15年9月29日 判例時報1843号69頁

転倒転落予測システムの概要

まず、医療の現場経験の長いベテラン看護師が、実際に転倒・転落事故にあった患者さんの電子カルテを読み、リスクが高いと感覚的に判断した電子カルテを教師データとして少数選択します。KIBITは、自由記述の電子カルテをそのまま読み込み、ベテラン看護師(専門家)が「転倒しそう」と思った患者さんの状況に関する暗黙の基準を学習します。次に、KIBITは、未知の電子カルテに対してスコアを計算し、転倒リスクの高い順にリスト化して転倒・転落事故を予測します。NTT東日本関東病院と実施した実証実験では、KIBITを搭載した転倒・転落予測システムは、従来の転倒リスク評価シートの予測精度と同等あるいは上回る精度を示しました。

転倒転落予測システムの概要